2022/07/25 01:55
安部仁美・木部大資
竹工二人展
- 心竹正対のとき -
2022年 8月6日(土) - 8月16日(火)
作家在廊日 8月6日(土)、7日(日)
「職人」と「アーティスト」の違いを問われた時、やはりそこには作り手個人の感性や美意識から生まれる創造性、そして表現に挑戦し続ける覚悟の有無があると思う。
同じく「商品」と「作品」にも同じことが言えると思う。
「作品」には作り手の感性や美意識が隅々まで脈打つように流れている。
多くの名工がいる竹工芸の世界において安部仁美さんは間違いなく作品を作り得るアーティストである。
彼女は伝統的な竹工芸の技法を土とし、豊かな発想を種にし、自らの感性を降る雨として、作品を育んでいる。
それはアートピースのようでありながら用を成す。
鑑賞に値する美しさ。
手に取り、実際に使うことのできる表現の豊かさ。
そして竹工芸と実直に向かい合いながらも竹工芸の概念にとらわれることのない創造性。
彼女の作品から感じるこの感覚は私の心を強く惹きつける。
竹という素材と向き合い、その声を聞き、応えるように生み出される彼女の作品。
一見の意匠を限りなくシンプルにすることで引き立つ竹の質感も魅力の一つである。
竹の編組品は竹ヒゴ作りが全体の作業の8割と言われる。
もちろん彼女も竹を割るところから1本1本手作業でヒゴを作る。
一般的な竹籠よりも僅かにヒゴを厚くしたり(0.3mm)、縁の竹の幅を細くしたり、ヒゴの面取りを丁寧に行うなど、言われなければ気付かないような細やかな拘りがヒゴの1本1本に込められている。
大事にしているのは作品を手にした時の「質感」。
重さ、滑らかさ、手に沿うような膨らみ…
触れるだけで彼女の作品だと感じさせてくれる質感が確かに在るのである。
今展は彼女にとって初めての展覧会となる。
これまでは企画展に少数の作品で参加することはあっても個人の名前を前面に出した展覧会を開催したことはない。
心竹正対のとき…
彼女の心と一本の竹が向かい合って生まれる作品の数々。
その世界観が広がるのが楽しみでならない。